少女が宝箱を開ける
story

まだ
彼女が小さかった頃の
お話です

おばあちゃんの部屋には、
大切にしまわれている、ひとつの箱がありました。

その箱を開けてもらえる日は、いつも少し特別でした。

「今日は、何を見せてくれるんだろう」

おばあちゃんの隣に座って、蓋が開くのを待っていたことを、
彼女は今でも覚えています。

箱の中には
おばあちゃんの
時間がありました

何枚もの写真がありました。
若い頃のおばあちゃんが笑っている写真。
まだ幼い母を抱いている写真。
彼女の知らない人たちと並んで写る、ずっと昔の家族の写真。

「これ、おばあちゃん?」

そう尋ねると、おばあちゃんは嬉しそうに、
その写真の話をしてくれました。

写真のそばには、小さなアクセサリーもありました。
出かけるときによく身につけていたブローチ。
彼女が「きれい」と言うと、
そっと手のひらにのせてくれたネックレス。
大切にしまわれていた指輪。

いつの間にかその箱は、おばあちゃんの人生を
少しずつ知っていくための箱になっていました。

おばあちゃんの写真とアクセサリー
静かな海の風景

やがて、時は流れていきます

窓辺で思い出を振り返る大人の女性

箱を開けるのを
楽しみにしていた少女も
いつしか大人になりました

大切な人と出会い、家族ができ、
守りたいものも増えていきました。

仕事や暮らしの中には、覚えておかなければならないことも、
少しずつ増えていきます。

だから、まずは自分のために残しておく。

大切なもののこと。必要な情報。そのとき考えていたこと。

忘れても、またたどり着けるように。
これからを安心して歩いていけるように。

中年の女性がパソコンに向かう

残しておきたいものは、
暮らしの中にあります

写真や動画を保存している場所。
大切な書類がある場所。契約しているもの。
家族に知っておいてほしいこと。

すべてを覚えておくことはできません。
けれど、存在や所在が分かれば、
必要なときにもう一度たどり着くことができます。

そして、年月が
重なっていきます

自分のために残してきたものに、
いつしか大切な人へ伝えたい言葉や想いが重なっていきます。

「これは、家族に伝えておきたい」

「このことだけは、知っておいてほしい」

最初は自分のためだったものが、
少しずつ、大切な人へ残したいものへ変わっていきます。

年齢を重ねた女性が記録する
海を見つめる男性

残したいものは、
人それぞれです

大切にしてきたもの。自分にしか分からない場所。
忘れたくない出来事。いつか伝えたい言葉。

誰かのために決められた形ではなく、自分の人生に合わせて残していく。
その積み重ねが、いつか誰かの安心に繋がります。

海と舵の風景

自分の人生のことを、
自分で残していく

何を残すのか、どこにあるのか。
誰に、どのように繋いでほしいのか。
自分で選び、自分で決めるために。

おばあちゃんから
あなたへ

あの箱も、最初から誰かに何かを残すために
作られたものではなかったのかもしれません。

日々の暮らしの中で、忘れたくないことを残し、
大切なものをしまい、いつか伝えたい言葉を重ねていった。

その一つひとつが、
年月をかけて、あなたへ託すものになったのでしょう。

小さな女の子がパソコンに向かう
成長した少女と夫と子どもが海と桟橋を見つめる家族

そして今度は、あなたから

あなたが自分のために残してきたものが、
いつか、かけがえのない人のもとへ。